虫さされによる症状

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ハチ類 | アブ・ブユ・カの類 | 毒蛾・毛虫 | ダニ | ノミ
クラゲ | 疥癬 | マダニ | ツツガムシ | ムカデ

(難冶例) とびひ | 固定蕁麻疹(結節性痒疹) | 小児ストロフルス | ライム病

 何の虫に刺されたかは、皮膚の症状と生活背景をチェックすることで推定することができる場合がある。本人に話しを聞くことで、虫さされの症状と紛らわしい皮膚疾患との区別も可能になると思われる。患部が細菌感染やウイルス感染を起こしていないかどうかなどを確認することも大切である。

 ハチ類 

 いちばん被害が多いのは、スズメバチ、アシナガバチ、ミツバチであり、いずれのハチも針を刺して、根元にある袋から毒液を出す。それぞれのハチ毒の成分は、種類によって必ずしも同一ではないが、ヒスタミン、セロトニンなどのアミン類、キニン、メリチン(溶血毒)、アバミン(神経毒)などのペプチド類、ホスホリパーゼ、ヒアルロニダーゼなどの酵素類などが知られている。ハチは集団生活をしているため、刺される時は、集団で襲われることがほとんどで、一匹に刺される方が痛みも強く、毒も強い。

 ハチに刺されると刺し口からは出血し、激しい痛みを伴って、真っ赤に腫れあがり、しみのようなあとが残ることがある。人によっては、何回も刺されるうちにアレルギー反応が強くなり、発熱、頭痛などがしたり、まれではあるが、全身のショック[全身の皮疹(紅班、蕁麻疹、血管浮腫)、呼吸困難(上気道の浮腫、喘息様気道狭窄)、血圧低下、腹痛、嘔吐、下痢など]を起こして死亡することもある。これをアナフィラキシーショックといい、ハチ毒による死亡の大部分をしめ、毎年40人近い死亡者がでている。

 ハチ毒に対するアナフィラキシーショックは、I型アレルギー反応により発症するものである。抗原(ハチ毒)がマクロファージに取り込まれ血清中にハチ毒に特異的な免疫グロブリン(IgE)が産生される(感作の成立)と、そのIgEが肥満細胞の受容体に結合するようになる。ふたたびハチに刺されるとハチ毒に特異的なIgEと結合した肥満細胞が活性化され、主にヒスタミン、ロイコトリエンなどの化学伝達物質が放出される。

 これらの作用である血管透過性亢進、平滑筋の収縮、腺分泌促進により全身アナフィラキシーを起こす。したがって、通常、アナフィラキシーショックは一度目の刺し傷では、発現せず、刺傷によっては、ハチ毒に感作され、ハチ毒アレルギーが形成された後、再び刺傷されることにより発現するとされている。ほとんどは、刺された直後より数分から15分くらいのうちに発症する。ハチに刺されて全身アナフィラキシー反応を起こしたひとが、次に同じハチに刺されて再度全身反応を起こす確率は約50%である。

 ハチ毒にアレルギーを有する例は、一般人では、0.12%であるが、林業従事者では、14.4%と高率であるとの報告や、養蜂関係者では12%にハチの刺傷による全身反応の既往がみられたとの報告などがある。少数のハチに刺され全身反応があれば、アレルギーと考えてほぼ間違いないが、毒の強いハチに刺されたり、刺される場所によっては、アレルギーがなくてもハチ毒の中毒作用によりショック、急性腎不全、他臓器不全となり死亡することもある。

 全身症状がアレルギーによるものか中毒作用によるものかは、症状だけから判断するのはむずかしい。このように全身アナフィラキシーは危篤な問題となることがあるため、繰り返しハチに刺されるおそれのある場合や刺される度に症状が重くなっている場合では、減感作療法による治療が勧められる。

 また海外では、全身反応既往者は、エピネフリン液と注射器を携帯し、ハチに刺された時には、自ら注射をすることができる。

 アブ・ブユ・カの類 

 アブの吸血時には激痛があり、刺し口に出血、やがて発赤がみられ、中央にしこりができる。翌日あたりから激しい痒みが起こり、2〜3週間続くことがある。

 ブユに刺されると軽い痛みがあり、しばらくすると激しい痒みが起こり、1〜2週間続くことがある。人によって赤くはれ、水ぶくれをつくったり、ブユに刺された後に、手足や胸、腹などに、非常に痒い発疹が多発することがある。ブユは、高温多湿の日に活動して、人畜に群がり吸血するため、高原や山地の牧場などのアウトドアでさされることが多い。

 に刺されると弱い痛みを感じ、一般に激しい痒みがあり、赤く腫れ数時間で治る事が多い。時には、中央が水ふくれになることもある。アカイエカやヤブカ、シナハマダラカによるものが多く、メスの成虫のみが吸血する。吸血する前にカのヒスタミン様物質を含む唾液が皮膚のなかに入ることにとって特有の痒みが起こる。

 カに対するアレルギーの強い人では、さされた後高熱がでて局所が膿んで、潰瘍になることがある。カに刺されたときの症状には個人差が多く、それは即時反応と遅延反応がいつもあわせて起こるわけではなく、人によってその組み合わせが異なるためで、そのことが個人差となって現れる。

 刺された回数、虫毒の濃度、量、刺される場所などが、その組み合わせに影響するようである。刺された回数の少ない時には、遅延反応によってのみ症状が発現し、回を重ねると刺された直後の即時反応と、しばらくしてからの遅延反応により症状が発現する。さらに刺されると即時反応のみとなり、遅延反応による症状の発現はなくなり、もっと刺されると、免疫が成立して無反応になるといわれている。

 カに刺された回数の少ない乳幼児のほうが遅延反応による強い皮膚反応が現れる。また、青年期になると即時反応のみしか出ない人が多くなり、高齢者では、無反応の人が多くなってくる。このような乳幼児から高齢者にかけての反応経過は、ノミなどでも同じように考えられている。

 毒蛾・毛虫 

 マツカレハ、イラガ、チャドクガ、タケノホソクロバなどが問題となり、有毒毛を持つ幼虫(毛虫)、成虫、有毒毛、の付着した脱皮殻・繭などに触れることによって皮膚炎を起こす。接触後、数分ないし数時間でピリピリする感じが起こり、次第に痒みがでてくる。そして、蕁麻疹のような発疹を生じる。むくみや腫れがあり、非常に痒いのが特徴である。

 放っておいても1時間くらいで痒みは薄らぎ、次第に赤みや腫れも消えてくるが、衣服などを手で擦ると、また蕁麻疹のようになることがある。さらに、4割の人で1日後に浸潤性紅班が出現するといわれている。毛虫による被害は、本人が毛虫の存在に気がつかないうちにおきたり、季節はずれの繭によることがある。

 毒蛾の幼虫は、クリ、クヌギ、サクラなどの樹木の葉を好んで食べ、6月〜9月にかけて成虫になる。毒毛に触れたら、よく泡立てた石鹸と流水で洗い流すか、セロハンテープで毒毛を取る必要がある。

 ダニ 

 体のあちこちにポツポツと、気まぐれな感じの痒いブツブツがみられる。ダニ刺症はツメダニ、イエダニ、トリダニによるものが多い。ツメダニは畳や絨毯に、イエダニはネズミに、トリダニは野鳥やペットに住みついて被害を及ぼす。まれに、病原性ウイルスを保有、伝搬することがあるので注意する必要がある。

 ノミ 

 最近では、ヒトノミによる被害は減っているが、ネコノミによるノミ刺症が増加している。犬に寄生しているのも7〜8割がネコノミといわれている。刺されると赤く腫れ強い痒みがあり、皮膚に出血点をみることがある。水ぶくれを起こすこともある。動物のノミに刺されたときは、とくに皮膚反応が強く出るようである。

 ノミの優れた跳躍力から両側下肢に多発する。ネコとの接触があったか、またはネコの出入りする場所と症状の出現とは関係が深い。先に、カのところで記したように、刺された回数によって反応が異なることが知られており、ネコを飼っている人より、たまにネコを飼っている家を訪ねるネコノミに慣れていない人のほうが、ネコノミによる皮膚症状がひどく出るなどよく聞かれるところである。

 クラゲ 

 クラゲの種類は多いため、刺されたクラゲを特定することはむずかしく、症状や場所から推定するようである。クラゲ毒としては、タラシン、エンゲスチン、ヒプノトキシンが分離されているが、いまだはっきり解明されていない。刺された直後から、チクチクする痛みと発赤があり、しだいに小丘疹が刷毛でなでたように線状に並んで腫れあがる。

 疥癬 

 ヒゼンダニが皮膚に寄生して起こるもので、広い意味の虫さされに入る。ヒゼンダニは、手のひらのほか腕などの皮膚のやわらかい部位に好んで寄生し、よく「疥癬トンネル」という微細な空洞を作る。この赤みの強いやや大きめの丘疹にメスの成虫が寄生して、2〜3日に1個ずつ、1〜2カ月にわたって産卵し続ける。

 症状としては、特有な発疹と非常な痒みがある。普通の疥癬の場合は、重症でも1,000匹くらいの寄生で済むがノルウェー疥癬の場合は100万匹から200万匹が寄生し、その感染力は強く問題となる。最近では、疥癬は老人を中心に全国的に流行しており、家庭内では乳幼児に感染することがある。皮膚の接触、寝具や衣類を介して感染するため集団生活をしているところでは、衣類や寝具は常に清潔にしておくことが必要である。とくに、ノルウェー疥癬の場合は、患者の隔離や寝具の殺虫処理など、その対応は十分注意しておこなわなければならない。

 マダニ 

 咬まれてもすぐに気づかないことが多く、1週間くらいしてから入浴中に見つけたりする。吸着すると口器を皮内に深く挿入し、長時間寄生し血を吸い続ける。体長数mmであるが、血を吸うと1cm以上に膨れ上がることがある。吸着部位は赤くなり腫れることがあり、まれにリンパ管炎・リンパ節炎を生じたり、紅班などを生じるライム病を起こす事がある。無理にマダニを引っ張って取ろうとすると頭部がもげて残ってしまうので、医師への受診が望ましい。

 ツツガムシ 

 「ツツガムシ病」はダニの1種類であるツツガムシによって媒介される。昔から死亡率の高い風土病として知られており、本来疾病を意味する「つつが(恙)」から「恙なし」という言葉も生まれている。

 この病気は、病原体であるリケッチアをもつツツガムシに刺されると、そのリケッチアが体内に入り、1〜2週間で発病する。刺し口は小さな水泡から潰瘍となり、かさぶたができ、7〜10日後、高熱がでて全身に鮮紅色のバラ疹ができる。虫の刺し口を見つけることが難しい場合があり、一見して虫さされとはみえないので、薬剤による中毒と間違われたりすることがあるようだ。この病気は、医師が保健所に届ける義務があり、北海道と沖縄を除き日本全国から届け出がある。この病気は放っておくと死亡することもあるので疑わしいときは、速やかに医師の診断が必要である。

 ムカデ 

 ムカデは夜行性のため、主に夜、被害にあう。ムカデ毒はその種類により異なるが、アカズムカデの毒が最も強力で、ヒスタミン、ポリペプチドである。刺されると激痛があり、発赤、腫脹が起こる。場合によってはリンパ管炎やリンパ節炎を伴い潰瘍化することがある。


 難冶例


 とびひ
 

 虫さされにより出現する症状は、多くは痒みを伴うものであるため、患部を掻くことによって細菌感染を起こすと、さらに痒みが増すので子供の場合さらに掻きむしり、とびひになることがある。

 とびひの原因となる菌は、2種類に分類される。1つは水泡性膿痂疹といって、ブドウ球菌によるものである。もう1つは、痂皮性膿痂疹といって、ブドウ球菌と連鎖球菌の混合によるものである。ブドウ球菌が原因の場合、その多くは半球上の水ぶくれができ、簡単に破れ皮膚がジュクジュクした状態になる。溶連菌が原因の場合には、最初は中央に膿を持った小さな紅班や丘疹の集まりができ、やがてかさぶたを作って広がる。

 固定蕁麻疹(結節性痒疹) 

 虫さされと関連してみられる症状に固定蕁麻疹(結節性痒疹)がある。夏にブユなどに刺された後秋まで残り、掻いているうちに大豆ほどの大きさのしこりになる。このしこりは灰褐色で、おもに青少年の下肢に出き、翌年まで続くことがある。

 小児ストロフルス 

 主に虫に刺さされたあとが強い痒みを伴って腫れ、水膨れができる。小児特有の反応で、5〜6歳ころまでみられ、虫毒に対する過敏反応と考えられている。

◇ ライム病 

 病原体スピロヘータがマダニにより媒介されることにより発症するものである。紅斑により始まり、数日から数週間で髄膜炎、脳神経麻痺、末梢神経障害、紅斑の拡大、潰瘍化、数ヶ月で関節炎、心障害、脳障害などを発症することがある。最近になって日本からの報告もあり話題になっている。



はじめに〜痒みの起こるメカニズム〜肥満細胞の活性化
虫さされによる症状(虫別)〜難治例
薬物療法〜おわり

夏の皮膚病


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