
アトピー性皮膚炎は、かゆみや赤みを伴う慢性的な皮膚炎で、乳幼児から成人まで幅広い年齢層に影響を与えます。この疾患は皮膚のバリア機能の低下や免疫系の異常が関与しており、主な特徴として、強いかゆみ、赤みを伴う湿疹、乾燥肌が挙げられます。
特にかゆみによる掻きむしりが症状を悪化させるため、早期の対処が重要です。この疾患は単なる皮膚の問題ではなく、日常生活、学習、仕事にも影響し、生活の質(QOL)に影響を与えるため、総合的な管理が必要です。
一方で、アトピー性皮膚炎は、適切な治療とスキンケアで症状をコントロールできる可能性が高い疾患です。
肌のバリア機能低下との関係
アトピー性皮膚炎の患者は、皮膚のバリア機能が低下しているため、外部刺激に対して敏感です。バリア機能の低下は皮膚の水分保持能力の低下や、角質層の異常によって引き起こされます。これにより、アレルゲンや細菌が皮膚に侵入しやすくなり、炎症が起こります。このため、保湿剤によるスキンケアが治療の基本となります。バリア機能の強化が、症状改善の鍵となります。

症状がよく現れる部位(顔・首・手・関節など)
アトピー性皮膚炎の症状は、特定の部位に現れやすいです。乳児では顔や頭皮、小児では肘や膝の内側、成人では顔、首や手に湿疹がよく見られます。これらの部位は、角層が薄く、外部刺激に弱いためです。特に手は頻繁に洗うため乾燥しやすく、症状が悪化しやすい部位です。部位ごとのケアを徹底することで、症状の軽減が期待できます。
季節や気候による影響
アトピー性皮膚炎は、季節や気候によって症状が変化します。冬の乾燥は症状を悪化させる要因です。冬は皮膚の水分が失われやすく、かゆみが強まります。季節に応じたスキンケアが、症状管理に役立ちます。
薬物治療(ステロイド・免疫抑制剤など)
アトピー性皮膚炎の治療では、ステロイド外用薬や免疫抑制外用薬が一般的に使用されます。ステロイド外用薬は炎症を抑え、かゆみを軽減します。免疫抑制剤(タクロリムスなど)は、ステロイドの代替として使用される場合があります。適切な薬物治療で、症状を効果的にコントロールでき、正しい使い方をすることで、最大の効果を得られます。
塗る量の目安「FTU」とは、大人の人差し指の先端から第一関節までの長さに出した軟膏の量のことです。
これが「大人の両手のひら」の面積に塗る適量とされています。塗った後、軽くティッシュペーパーが付く程度が目安です
保湿剤とスキンケアの重要性
保湿剤は、アトピー性皮膚炎の治療と予防の基本です。皮膚のバリア機能を強化し、乾燥や外部刺激から守ります。入浴後に保湿剤を塗る習慣が特に効果的です。炎症が治まった後の保湿を中心としたスキンケアが、症状管理の鍵となります。
正しい入浴と洗浄方法
正しい入浴は、アトピー性皮膚炎の悪化予防に重要です。ぬるま湯(38~40℃)で短時間(10分以内)の入浴を心がけ、刺激の少ない石鹸を使用します。ゴシゴシ洗いは避け、優しく洗うことが大切です。入浴後はすぐに保湿剤を塗ることが推奨されます。
Step1:洗浄|たっぷりの泡で優しく洗う
基本の洗い方
- ぬるま湯(38〜40℃)で予洗い
- 石鹸をよく泡立てる
- 手のひらで優しく洗う(タオルやスポンジは使わない)
- しっかりとすすぐ
お湯の温度は38〜40℃が目安
熱いお湯は皮脂を必要以上に取り除き、皮膚の乾燥を悪化させます。
Step2:拭き方|こすらず「押さえるように」水分をオフ
タオルで強くこすることは厳禁です。清潔で柔らかいタオルで、軽く押さえるようにして水分を吸い取るようにしてください。
Step3:保湿|お風呂上がり「5分以内」が理想的
入浴後は急速に皮膚の水分が失われます。お風呂から上がって5分以内に保湿剤を塗ることが効果的とされています。保湿剤は皮膚に摩擦を与えないよう、優しく置くようにして塗り広げることが重要です。すり込むような強い刺激は、かゆみを悪化させるため気を付けましょう
スキンケアは薬物療法と並ぶアトピー治療の基本です。正しいスキンケアを行うことで、薬の効果を高め、症状の悪化を予防できます。保湿とスキンケアを徹底することが大切です。






